積読がなかなか減らない状況なのに、この本みたいに買ってきてあっという間に読み終わってしまうものもあるのだ。
夢枕獏の陰陽師シリーズは大好きだ。なんといっても晴明の屋敷のいつもの簀子で博雅と飲み交わす酒がうまそうなのだ。
荒れ放題に見える庭から漂っていくる桜や菊の香りを、時には蝉丸法師の琵琶に博雅の笛を、美しい月を肴に酒を飲む。その情景は僕の頭のなかでくっきりと映像になる。
「愛しみ」とかいて「かなしみ」と言う。琵琶の音は「嫋嫋と」鳴る。満月は「皎皎と」輝く。
人のカナシミ、神のおかしみ。
そんなものをぜんぶひっくるめて肴にする。なんと贅沢なことか。
僕もそんな酒を飲んでみたいと憧れてしまうのである。
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