面白かった。
本屋でたまたま目にして、このカバーに惹かれて買ったのだ。著者ななんとなく見たことがあるようなないような感じ。とくにマークしていたということはなかった。
が、これは当りだったな。
30年ほど前には、こんなような話は結構あったような気がする。テレビでも中村雅俊とかがドラマで「俺たちの旅」とかやっていたでしょう?ああいう右往左往手探り青春の世界。そういうのに憧れた時期が僕らの世代にはわりといるんじゃないかと思うのだ。
が、この話は90年代のことだ。30年前の人々と違うのは、著者があちこちの辺境の国々に出て行くフリーライターだってことだ。それ以外は金がなくてダラダラと過ごしていて、「俺たちの旅」的世界みたいに一生懸命じゃない。傍から見ればなにをやっているかわからない怪しい人である。そういう人が暮していけるワセダの古いアパートが、ほんのちょっと前の東京にはあった(今でも探せばあるのだろうけど)のだな。
とりあえず食える程度は働くけどそれ以外はゴロゴロして過ごして学生気分を卒業できないでいるという人は、どんな時代でもいるもので、ことさらフリーターだとかなんだとか騒ぐことでもないのかもしれないなあと思う。まあ、もちろんこの人は「書く」という才能があるからただのフリーターではなかったわけだけど。
だけど、読んでいて強烈にせつない気分になったなあ。僕は同じような時期に毎日会社に通っていたわけで、それはそれで別に悔いがあるわけではないんだけど、なんだかなにか落し物をしてきたような気持ちになったのだな。あの年代に戻ることはもうできないってことを痛烈に感じてしまった。
まあ、それはそれとして、とても読みやすくて面白かったので、この人の他の作品を読んでみようと思ったよ。
また読みたい本が増えてしまった。
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