「出合った」という感じがした。
これ、面白い。僕の大好きなタイプの小説だ。
書店で平積みになっているのを見て、気になってはいたんだけど、ハードカバーだしなあなんて思ってなかなか買う気にならなかった。
最近、こちらのコメントを読んで、読んでみようと思い立って書店に買いに行った。しばらく手持ちの本を読んで過ごしていたところだったので、この本を含めて5千円以上も買い込んでしまった。ま、そんなことはどうでもいい。
「黒髪の乙女」は不思議な存在だが、とてもかわいらしくて強くてチャーミングだ。理想の存在といってもいい。だから「先輩(私)」に僕はたやすく感情移入してしまう。もろもろの恥ずかしく愚かでもどかしい若かりし頃を思い出して、ひとつひとつ「うんうん。そういうことってあるよね。」とうなずいてしまったりする。
本に対する一種変態的な思い入れというのもわかるような気がする。まあ、僕の読書量では遠くおよばない世界ではあるのでけれど。
そういえば、この本を読んでいて、いくつかの過去の思い出の本たちを思い出した。
ひとつめは「清原なつの」。どうもこの本は清原作品の多少シュールなストーリーを思い起こさせるところがある。「花岡ちゃんの夏休み (ハヤカワコミック文庫
(JA840))」の大学生活はどこかこの本のムードとかぶるような気がするのだな。
ちなみに僕は清原なつのが「りぼん」にいくつかの作品を書いていた頃、全プレに応募するほど「りぼん」の愛読者であった。清原なつのの作品をそろえたくて、書店をはしごしてもみつからないRMC(りぼんマスコットコミックス)を店頭注文したものである。オタク全盛の今ならいざ知らず、結構怪しい十代を過ごしていたわけだ。
もうひとつは「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 (角川文庫)」。おどろおどろしいタイトルだが、椎名誠が仲間の目黒考二との意見対立(要するにケンカだな)をしたときに、その腹いせのために書いたと言われる珍妙な作品で、なぜこの本を思い出したのかというと、本をめぐって人生を擲つようなおバカな(失礼)人々が出てくるからなのである。
そういえばこの本に出てくる「古本市」。これはこれでかなり魅力的だ。残念ながら今僕が住んでいる札幌ではこのような催しに出かけたことはないが、ずいぶん昔に池袋はサンシャインシティ文化会館でたまたま行われていた古本市に行ったことがあった。確か明治か大正あたりの東京の古地図を買ったような気がするが、あのムードは独特のものがあったのを懐かしく思い出す。本がかわいそうだと思ってしまうような昨今の大手量販古本屋とは違う古書の世界はなかなかいいものなのだな。
それにつけても京都の街である。この本を読むとなんだか京都に住みたくなってくる。通りや町の名前を追って、地図を眺めながら読むのも一興。「黒髪の乙女」を探して夜の街を徘徊してみるのもさらに一興かもしれない。
[いいですね] 読まれましたか!
哲学とファンタジーとコメディのバランスがもう、絶妙ですよね。
緋鯉とか達磨とか、全編に散らばった小物がおかしくておかしくて。
常に控えめに虎視眈々と追いかけている先輩がとてもかわいらしかったです。
黒髪の乙女の一生懸命っぷりも。
ちょっとハマッてしまう世界ですよね。古本市の章は良かったですね!
あ、んちばさんは「りぼん」少年だったのですね。(全プレ応募ですか!)
意外と多いのかも。うちの兄も「ときめきトゥナイト」全巻集めてましたから。
清原なつのさんのコミックも椎名誠さんの本も残念ながら読んでいません。
世界観が似ているとなると、ちょっと興味をもってしまいました。
投稿情報: えび | 2007/10/09 22:01
こういう小説を読むたびに、作者の頭の中はどうなっているんだろうと思います。
背中に緋鯉を背負うってどこから発想するんだろう?象の尻ってのもどこから出てきたのかわからないし。すごく楽しいですよね。こういうセンスはうらやましいなと思います。
(そういえば、二年ほどまえに北大博物館でマンモスのお尻を見たっけ。関係ないけど。)
清原なつのは当時としてはかなり変わっていたというか、思い切ったテーマの作品が多かったような気がします。今のようにレディコミとかのジャンルがない時代に、少女マンガというジャンルでの表現の限界に挑戦していたような気がする。
最近では、「千利休」という作品を出しています。作品のできはもうひとがんばりという感じでしたが、流行モノに迎合しない独自の世界を築いているなあと思います。
あまり書店などでも見かけなくなっているのが残念ですが。。。
「ときめきトゥナイト」ですか。。。僕は「キャンディ・キャンディ」から始まった世代で、「ときめきトゥナイト」の頃は少女マンガの限界を感じはじめた頃だったなあ。。。(笑)。力のある作家が青年誌に移っていったのと同時に「りぼん」は卒業した感じでした。ジャンプはもう少し後まで読んでいたかな。
今は作家の男女差はずいぶん無くなって、いろんなジャンルを読めるいい時代になりましたよねえ。
投稿情報: んちば | 2007/10/10 09:16