肝移植を軸に、天才的な手技を持つ外科医と保守的な大学、地方病院の問題点を描いた作品。と言えば社会派作品という側面が強くなってしまう。そういう問題提起ももちろん大きな部分を占めるのだが、この作品の魅力はやはり主人公当麻鉄彦が行う手術の場面だろう。外科医というのはまず手技に秀でていなければならず、論文の評価だけで地位が決まるシステムは意味がないだけでなく、有害であると訴える。
医者ではない一般人から見ると手術は怖い。きちんと治療の内容を説明しない医者も居たりしてあまり手術がどのように行われているのか知る機会は少ない。僕はこの一年あまりの間に自分や身内の手術の経験から知ることによる安心感というのがあるのだということを実感して、自分や身内の受ける治療について勉強するようになった。
そういう関心の中で興味をもった小説だったが、読み始めたら面白くて5日で6冊一気に読んでしまった。
最初はビジネスジャンプに連載されていた劇画「メスよ輝け!」で、この小説はそれをノベライズしたものだ。コミックのほうも読んでみたい気がするが、小説を先に読んでしまうと自分の持つイメージと違和感が出てしまうことが多いのが難点だ。
手塚治虫のブラックジャックが好きな人は文句なく楽しめる小説だと思う。
孤高のメス 第1巻―外科医当麻鉄彦 (1) (幻冬舎文庫 お 25-1)
大鐘 稔彦
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[いいですね]
医療ものは漫画でもドラマでも小説でも、やっぱり面白いですよね。
なんででしょう…、人間の生死がかかわる場所にはドラマがあるからでしょうか。
ブラックジャックは好きでした。
あっさり助かる人もいるし、あっさり死んじゃう人もいるという。
おばあちゃんが出てくる回は泣けてきます。
やっぱり人間がドラマを作るんだな、と思います。
出張の移動中って、こういう続きものの文庫本、助かるんですよね。
面白そうなので、チェックさせていただきますねー。
投稿情報: えび | 2008/08/03 00:42
ブラックジャックが医大の解剖実習の教室で献体した死刑囚の治療箇所を確かめる話で、くじけそうになった学生が医者になろうと思ったのは「人生になにかあると思ったから」と言う場面がありますよね。ここでブラックジャックも同じだと言う。
手塚治虫がブラックジャックを描いたはそういう思いがあったでしょうし、最初は「怪奇マンガ」の分類だったものが医療マンガという分野に広がったということは読者も同じ思いを共有しているということなのでしょうね。
医療の世界って身近なのにわからないことが多い世界だから、それを描くマンガや小説というのは面白いし、ドラマになるんでしょうね。
そういえばブラックジャックは全部そろっていないのだなあ。。。愛蔵版を揃えようかな(^^)。
投稿情報: んちば | 2008/08/03 09:29