この人の作品を読んでいるとなんだか懐かしい気分になる。
なにが懐かしいかといえば、ストーリーが昔の少女マンガっぽいのである。
「昔の」と言っても漠然としている。具体的に言うと三十数年前の「りぼん」である。なぜ「りぼん」かと言えば、そのころ僕は毎月欠かさず「りぼん」を読んでいたのである。
作者も書いているとおり、始まりは「落ちモノ」。「少女が空から降ってくる」みたいに、突然行き倒れの「いい男」を拾うのである。そしてそいつがすばらしくよくできたヤツなのである。家事全般をこなし、節約家で、そして休日には主人公を外に連れ出して「雑草という名の草はない」なんていいながら道草を摘み、魔法のように美味しい料理を作るのである。そしてとても主人公を大切にしてくれて、あまりに大切にしてくれるが故に主人公は悶々と贅沢な悩みにひたり、いつかいなくなってしまうのではと不安に思うのである。そしてそして。。。
きっとこんな感じのマンガを読んだことのある人はいるでしょう?
こう書いてみると古いとかつまらないとかけなしているように見えるかもしれないけど、なかなか面白いし、僕はこの手の話は結構好きなのである。
恋愛部分はまあある程度想像がつくと思うけど、この小説のよさは「植物図鑑」の部分なのである。道草料理がまた美味そうなのだ。「植物に名前があること」への素直な感動がいいのだ。
別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。
と、川端康成が言ったそうだ。ふうん。
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